ゲーム分析レポート
8/10(水) 全日本女子ユース(U-15)サッカー選手権大会 総括
reported by 楠本洋之
今年もこの舞台に立つ事が出来た。勿論、参加するだけでは満足していない。全国制覇を成し遂げる為に、メンバーに入らなかった全選手の思いも背負って・・・・。
今年は、昨年までのJヴィレッジ福島から場所を変え、J-GREEN堺での開催。
予選グループはD組、昨年のファイナリストである中国代表 青崎SCHanakoClover’s(広島)、四国代表 鳴門ポラリスレディースFC(徳島)、九州第2代表 大分トリニータレディース(大分)との4チームで決勝ラウンド進出1枠を懸けて争う。
初戦は大分。言うまでも無く強豪チームだが、相手云々ではなく苦手の初戦を自分達の力で乗り越え一人一人がベストのパフォーマンスを発揮できるかが勝負となる。この大会に懸ける思いが強すぎる(当然と言えば当然だが)選手達は、やはり動きが良くない。メンタルを上手くコントロールして良い緊張感で試合に挑む事が出来るよう工夫を凝らしてきたが効果は薄かったようだ。システム、戦術の噛み合わせも悪くなかなか自分達のリズムを作れずに試合は進んでいく。ロングフォワードパスで攻め込んでくる相手に対応しきれない場面が多くあり決定的場面の数は相手が勝っていた。ただ、相手も初戦の硬さがあるのか中盤やDFラインでもたつく事がありそこを冷静に狙う事が出来れば楽な展開になっていた。選手交代で流れを掴みたかったが最後まで歯車は噛み合わなかった。ただ関東大会の初戦で見せた様な大崩れは無く、試合終了後の選手の表情からも成長が見えた事は収穫だ。本人達の意向もあったがベンチから、より分かりやすく、自分達の特色を出す為にシステムの変更をすればよかったと反省が残る。
予選第2節は鳴門ポラリス。全国大会常連の古豪だ。前日の反省を活かしてポゼッションの位置をより相手ゴールに近付けたい狙いからシステムを変更して挑む。また、リザーブ(帯同全22人)の能力が高く誰が出ても組織力が変わらないという今年の特色を活かしてスタメン及びベンチ入りメンバーを大きく入れ替えて酷暑連戦の先を見越した選手起用を行う。前半途中まで狙い通りのサッカーが出来、先制点を奪う事に成功するが相手の「これぞ全国レベル!!」と言えるスーパーFWにあっさり同点にされてしまう。しかし原因を私と選手の間で共有できていた為、極めて冷静だった。しかし選手の意思を尊重し認めたシステム変更で主導権を受け渡してしまう。予想通りの失点で逆転されてしまいHTへ。選手にはこの舞台でスフィーダのサッカーにこだわるか、結果を求めるかの2択を迫り現状を理解するように話しかけた。つまり現段階でスフィーダのサッカーを表現して結果を出すには足りないモノが多すぎるという事。結果を求める中で通用する部分が必ず見えてくると確信していた為、選手達にちっては不本意な選択だと理解していたがシステムを戻す。自己主張の強い選手達だが、決まったら全員のまとまりは迅速で、後半開始10分で結果を出す。10分で1点という事ではない、10分で3点だ。そして交代で入った選手全員が結果を出し勝利を手にする。同グループのもう一試合は大分が接戦を制した為、得失点差で首位に立ったものの、最終日は3チームに決勝ラウンド進出の可能性がある正に熱戦となる。全てを出し切り先に進みたい。
予選最終節青崎SCは昨年の決勝戦で浦和レッズと熱戦を繰り広げたチーム。そして今年スフィーダに新加入した選手(直前の練習で全治1カ月の負傷を負った為スタッフとして帯同)の古巣だ。この選手には、持っている素晴らしい能力、昨年の経験を十分に発揮して今大会でも活躍して欲しかったのだが・・・。また、チームの中心選手も大会前からの両足の怪我により本来のパフォーマンスを発揮できずにいた。この2人をベストな状態に保つ為の方法はあったのだが、それが出来なかった事を今でも申し訳なく思っている。
何はともあれ様々な思いが交差する最終節は、より多くの得点を奪い尚且つ最少失点に抑えたチームが笑う。立ち上がりから攻め込むがチャンスを決め切れず先制点を献上してしまう。青崎SCにもまたスーパープレーヤーがおりこの選手の個の能力は1対1では抑えきれず、2人でやっと太刀打ち出来るくらいの素晴らしい選手だ。選手達は浮足立つ事無く攻勢を続け、試合中にシステム変更を駆使しながら主導権を握る。失点から10分後に同点に追いつくが前半終了間際にスーパーゴールで失点、1点ビハインドでHTへ。後半は一進一退の攻防が続く中、互いにチャンスを作り出す。スコアは動かず後半20分になろうかという時間から一気に試合が動き出す。ロングフォワードパスへの予測対応を誤り、DFラインの裏に抜け出され痛恨の失点。気持ちの切れかかる選手達が自ら持ちなおそうとする中、全く同じ形で連続失点を喫してしまう。残り7分で1−5。しかし直前に交代を待っていた選手が投入されてからの選手達の反応は速かった。合宿で取り組んでいた攻撃オプションへの変更を全員が察知し、すぐさま実行に移す。今思えばこの7分間は選手達の成長の証が凝縮されていた。感情の起伏が激しく一度自分を見失うとなかなか冷静になれない部分があったが、それを乗り越えて最後まで力強くゴールを目指した。目指すサッカーを披露するにはまだ足りないものがあったが選択肢の中から選んだプレーを全員が共有し、2点を奪い自分達の流れを掴み切って試合を終えた。この7分間は今後の成長を約束するものであり現時点で持っている全てを出し切れたと言える。
目標には力及ばず予選グループ敗退で大阪を後にする事になったが、過去最高とも言えるメンバーを揃えても尚得られなかった「結果」は、我々スタッフも教訓にして更なる成長を遂げなければならないと強く思わせる。
選手達にはまだまだ成長する余地が多くある事を理解して欲しいしその事に喜びを感じて欲しい。目指すサッカーを表現するには時間がかかるが、必ず辿りつける。
ありきたりな表現だが悔しさを次につなげて欲しい。2011年8月10日を新たなスタートとして・・・・・。