5/5(土) FC駒沢女子
reported by 川辺
迎えた決勝戦、すでに両チームとも関東大会への出場権は得ている状況にあるため考え方によっては消化試合とも捉える事が出来る。しかし、その反面、東京都第一代表か第二代表かを決める試合だとも言える。ただ、第一代表か第二代表かということに大差はなく、もはやこのゲームはプライドが先行するゲームになることが予想された。相手とは過去に何度も重要な試合を戦い、常に激戦を演じてきた。特にこの年代の戦いでは毎回激戦が繰り広げられ楽な試合など一つもない。チームの総力に差があっても、それを凌駕する作用すらある難しいゲームだ。
更に今年の駒沢は昨年中2選手達の多くが主力としてチームを編成していたため、それらの選手が中3へと進級し過去最強という呼び名も高い。FC駒沢とは昨年も東京都予選の最後に優勝を懸けて戦い前半0-2とされながらも後半に3得点し大逆転劇を演じた事が記憶に新しい。昨年は東京都予選で競り勝ち共に関東大会へ進出したが結果的に我々は関東大会でベスト4に終わり、駒沢は逆山から決勝まで行き準優勝で全国大会への出場を果たした。しかもその後、全国大会でも勝ち続け最終的には全国2位という名誉な称号を得る事に成功している。東京都予選でスフィーダに負け、関東大会でレッズに負け、全国大会で神村に負けるといったように常に決勝で負けているが3回負けても全国2位という勝負強さを見せたことは素晴らしい事だと思う。その勝負強く、あらゆる経験を積んだチームの主力選手がほとんど残っているチームという事で普段よりもより一層難しいゲームになることは必至だった。しかし、東京都予選という舞台で間違いなく全国レベルのチームと一戦交えられるのは有り難い。お互いに何も失うものの無い決勝戦ではあったが、プライドを懸けた戦いであると共に全国レベルを体感する非常に稀な試合とも考えられた。
前半、スフィーダの選手達は明らかに集中力を欠き、準決勝を戦った時のようなモチベーションで試合に入っていなかった。まるで自分達の方が格上のチームであるかのような姿勢に開始から檄を飛ばしていたが、それでも集中力が高まる事は無かった。それが結果として現れたが開始直後の失点。相手は速いリスタートでゴール前にクロスを送り、それを見事に頭で合わせられ出鼻を挫かれる形で失点した。このリスタートのプレーではほとんどの選手が相手を見失っていた事からも、その集中力の低さが伺えた。この失点で良くなるかとは思ったが、相手のカウンターを喰らい右サイドを破られ0-2、、、この2失点の前に何度かの決定機があったので2チーム間における戦力の差があるとは考えていなかったが、まざまざと勝負強さを見せ付けられた。相手は前述でも述べたように昨年全国2位となったチーム。しかし、ここ数年我々はずっと駒沢に負けていない。競り勝つか、痛み別けに終わる事が多い。だから、相手は自身を挑戦者と捉え我々に高い意識で向かってきたが、本来であれば向かうべき立場の我々が受身になっていたことに問題があった。相手と我々の間にあるモチベーションの差は明らかであった。しかし、この2失点でようやく目が覚めてきた選手が多かったのが救いとなる。徐々に自分達の流れに持ち込み幾度も決定機を演出していく。駒沢との対戦では常に先制点を奪われるので2失点に対する苦手意識はなかったし、流れを読み取る限り必ず逆転できると信じていた。そうした中で左サイドから崩しFWへ繋いだボールをFWが個人技で相手を翻弄し個人技からようやく得点を奪う事に成功した。その後も決定機はあるものの、あと一歩でDFに粘られたり、GKのファインセーブもありなかなか追加点が挙げられない。1-2のまま前半を終えることになった。
ハーフタイムではチームの主要選手(MF)が足の痛みを訴え交代を申し入れてきた。ここで無理をさせることは関東大会にも影響しかねないと判断しシステム、選手の変更を行った。ここで交代させたのは怪我で満足にプレー出来ていなかったFWの選手。チームの極めて重要な選手でトップチームでもレギュラーを確保している中2選手だ。準決勝でも出場させてはいたが、動きに精彩を欠き本来のコンディションとは程遠い内容だった。決勝戦では怪我を考慮し出場させる予定ではなかったし、関東大会への影響も懸念されたが、本人の強い意志と目の前に懸ける闘争心を信じ無理を承知で出場させた。
後半、ゲームは動き出す事になる。その途中交代で出場させた選手が中盤から受けたスルーパスに反応し得点を挙げる。まさに本人の強い意思が産んだ素晴らしいゴールだったと思う。その後もその選手は痛みに堪えながら、今出来る全てのことをやってくれたと思う。このゴールを皮切りに更に勢いを増し攻め立てるが、本当に相手GKが素晴らしくなかなか得点を奪えない。普段からあれほどのパフォーマンスが出来る選手なのか?またはファインセーブをしたことで乗らせてしまったのか?それはよく分からないが、何度と無く決定機を阻止していたのは間違いなくGKだった。素晴らしいゴールキーピングだったと思う。逆転は時間の問題・・・そう考えていたが、それは甘かった。戦況としては我々の方がゲームを支配していたが、相手のカウンターは常に恐怖心を伴うような鋭さを持っており、カウンターの度に危機的状況にさらされる。従って、シュート数などでは圧倒しているが完全に我々に主導権があるとは言えない内容だった。どちらに3点目が産まれてもおかしくない状況と言って間違いないだろう。気持ちのこもった素晴らしい決勝戦だった。結局、どちらにも勝ち越し点が産まれることなく2-2のまま延長戦に突入した。
延長戦前後半を通じシュート数は5対1とチャンスも多かった。しかし、それでも相手GKにチャンスを潰されるシーンが目立ち、PK戦へともつれ込むことになる。乗っている相手GKを前にPK戦というのは不利なようにも思えたが、PK戦ではここまでのゲームの流れが勝敗を左右した。相手の優れたGKに対し、スフィーダのGKはU-14研修大会の最終日からGKにコンバートした選手。まだまだGKとしては経験値が足りなさ過ぎるようにも思えたが、誰も予想しなかったファインセーブで相手一人目の鋭いシュートをセービングした。正直、驚きが先行したが、その反面、このPK戦は勝てる!そう確信できるものであり、このセーブが運命の分かれ道となった。PK戦で1人目のキッカーがセーブされるのは後のキッカーに多大なプレッシャーとなる。それは2人続けて外せないということや1人目のセーブを目の当たりにし恐怖心が先行することからだ。精神的に優位に立つことでスフィーダの選手達は平常心を維持しながら確実に決めていく反面、相手は見えないプレッシャーから枠を外すシーンもあり4-2で最終キッカーが蹴ることなく勝敗は決まった。
今回も激戦を制することが出来、また、東京都予選という舞台でPKも含めた多くの経験を積めたことは今後の大きな力になりえることだ。全国レベルのチームと真剣勝負が出来た事は今の自分達の力を測る上では最高のものだった。PKまで持ち込まず逆転して勝てれば一番良かったのかもしれないが、私はこうした緊張感の中でPK戦という経験を積めたことが良かったと思う。昨年の関東大会ではPK戦で全国大会への出場権を逃した事もあるし、選手達がどこかでPKに対する恐怖心を持っていたからだ。PK戦は正直じゃんけんのようなものであるし真にチームの力を測れるものではない。しかし、PK戦という勝敗を左右するものがサッカーの競技規則の中にあるのであれば、それを受け入れて従うしかない。だからこそ、この経験は重要なことだった。今思えばU-14研修大会でもPK戦があった。そこで勝てたからこそ今回も勝てたのかもしれない。そう考えれば、今回もPKで勝てたことにより関東大会でPK戦へもつれ込んでも勝てる可能性が高いのかもしれない。もちろん、これは勝てたからこそ言えることであり、PK戦で確実に勝つ方法などない。敢えて言うのであれば、それまでのゲームの流れがそのまま作用するような気がしている。だからこそ、PKまでいったとしてもそれまでの戦い方が重要であり、どれだけ精神的に優位に立てた状態でPK戦に入れるかが重要なのかもしれない。
東京都予選では東京都予選でしか味わえないものをたくさん味わう事ができた。この経験が関東大会でも生きるはず。昨年は果たせなかった全国大会出場&日本一という目標に近付く事が出来たが、まだスタートラインにすら立てていない。本番はこれからだ。スフィーダ史上4度目の関東大会となるが次こそは祈願の全国大会出場を果たしたい。同じ過ちを繰り返さぬよう、残された関東大会までの時間を有意義なものとし、更に一歩成長した姿を披露したいと思う。関東大会では結果と同時に内容にも期待して頂きたい。