6/11(日) 浦和レッズJr.ユースレディース(埼玉県第1代表)
reported by 川邊 健一
関東女子ユース(U-15)サッカー選手権大会準決勝・・・この試合は全国大会出場権の懸った非常に重要な1戦。私達はこの舞台で、そして、この浦和レッズという相手と戦うことをずっと心待ちにしていた。相手は間違いなく優勝候補の一角を担うチームであり、そのチームと私達がどれだけ渡り合えるのか非常に興味深い側面すら持ち合わせる戦い。3位までが全国大会へ進めるが、ここでの敗戦は4位を意味する・・・それはずっと選手達にも話してきたことであり、インターバルの時間を考えた場合にそれはより現実的なものだと考えることが出来る。そういう意味でもこの準決勝は必ず勝たなければいけない試合であり、ここで全ての運命が決まると言っても過言ではない。第3者は『仮に負けたとしても3位決定戦で勝てるはずだ』と考えるかもしれない。もし、この試合で負けたとしても私は全国大会への出場を最後まで諦めることは無いだろう。しかし、私の信念は目の前の相手だけを考えること、従って、3位決定戦のことは負けたときに考えれば良い。だから、余計なことは考えずにこの事実上の決勝戦とも言えるべき戦いに全力を注ぎ込むことだけを考えていた。
試合前に選手達に伝えたこと、、、それは昨日までの内容・精神力・闘争心では絶対に勝てないということ。但し、この最高の状況の中、自分達の可能性や潜在能力を発揮することが出来ればチャンスはあり、勝敗の行方は読めないものになるということ。相手には関東リーグという高いレベルでプレーしている優秀な選手達が多いことはあるが、我々にはどんな相手からも必ず得点を奪う攻撃力がある。失点さえ抑えられれば、チャンスはあると考えていた。
試合が始まってみると相手主導のサッカーが展開された。相手との個々の技術力に差はあったが、戦えないほどの差ではない。しかし、押し込まれる時間が続く。これにはもちろん原因があり、相手の攻撃を恐れたリアクションサッカーになってしまったことが大きな要素だった。相手の攻撃に対し反応したサッカーは我々のサッカーではない。今までもそうであったが、私達の持ち味は自分達から仕掛けるアクションサッカーだと思っている。このような戦況が予想されただけに試合前に戦術的な指示として全く同じ事を話してはいたが、話を聞いて解決できるほどの柔軟性はまだ無かったのかもしれない。全体のラインが引きすぎてしまい相手DFへのプレッシャーがかけきれずに最終ラインから狙った長いボールを入れられてしまう。それによりセカンドボールを拾う為、FWとMFのラインが下がる。だからFWが相手DFに、そして、MFが相手MFラインにプレッシャーをかけられず、相手にボールを持たれてしまう。それが結果として相手主導のサッカーに陥る原因となっていた。相手は最終ラインから簡単に前線を狙ってくるが、その後の攻撃も理に適った素晴らしい展開力を持っている。ゴールに直結するようなプレーが多く、その攻撃の精度と破壊力には度々苦しめられた。結局、ゴール前の混戦から先制パンチを喰らい、すぐにセットプレーから直接決められ0-2。前半は苦しめられた展開であったが、まだ試合を諦めるような点差ではないし、後半に持ち直すことが出来れば十分に戦えると感じていた。
ハーフタイムに入り、選手達に伝えたことは戦術的なことがほとんどだった。ここでは非公開とさせてもらうが、リアクションサッカーをアクションサッカーへ切り替える為の指示だけをした。どれだけ選手が理解してくれたか?また、その変化によりどれだけ好転するかはある種のギャンブルであった。しかし、勝つためには最低でも2点は取らなければいけないわけだし、後半開始から賭けに出る必要性があった。
後半に入ると状況は好転し徐々に自分達主導のサッカーに転じ始めた。相手の勢いが落ちたという部分もあったと思うが、うまく戦術がフィットしたと言って良いだろう。前半が嘘かのように攻める時間帯が増え、徐々にチャンスも演出して行く。もちろん、攻撃的な戦いを選択したわけだからリスクもあった。しかし、そのリスクの部分に関してはチーム全体が共通理解として認識していたことで回避できるシーンも多く、更に攻撃の時間帯が増えたことで逆に後半に入ってからは相手の攻撃にゴールを脅かされるシーンは少なくなった。後半の半ばには前線からのプレッシャーで見事な得点を奪うと、更に勢いを増し攻め立てる。しかし、相手もこちらの戦術に合わせてスタイルを変更してくるなど戦略的な戦いが行使された好ゲームだったと思う。接戦になればなるほど次戦への影響は大きくなる。しかし、激しい戦いの中でそんなことは言っていられなかった。僅かに残った逆転への可能性を追求し、選手達は果敢に攻め、戦った。しかし、無情にもあと一歩届かず、力尽きることとなる。
試合後、選手達はまるで全国大会への出場が閉ざされたかのように泣き崩れていた。この1戦の重要性とそれを全力で戦った証だと思う。全力を出し切った中で負けたのだから、まだ力が足りなかったと認めるしかない。技術力であったり、勝者のメンタリティーであったり、強い相手と戦うことで、未熟さを露呈した部分はあった。次の試合までにそれらを改善することは出来ないが、すぐに全国を懸けた第2戦とも言える3位決定戦が始まる。それに向けて気持ちを切り替えさせる必要があり、短い時間で次も戦えるだけのコンディションに引き戻す必要がある。今はやれることをやり、悔いの残らない戦いをしたい・・・それしかない。