11/10(土) 早稲田大学ア式蹴球部女子

report by 楠本

東京都女子サッカーリーグ第6節は早稲田大学ア式蹴球部女子との対戦であったが、相手は2年前に日本大学チャンピオンになり、昨年も全日本選手権でLリーグチームを撃破し、インカレでもベスト4に進出した日本女子サッカー界のトップレベルのチーム。在籍する選手達もA代表(なでしこジャパン)、ユニバーシアード日本女子代表、その他各世代の代表や代表候補選手を11名も要する肩書きだけでも恐ろしいエリートチームである。結果は伴っていないかもしれないが、昨年、2年前よりも選手の質や層は大幅に上がっている。
スフィーダが早稲田と対戦したのは7月の全日本選手権大会東京都予選の準決勝だったが、その時は
[1]明らかにチーム力が劣ること
[2]難しい対戦相手だからこそ敢えて勝ちに行くことで新しい経験を積ませるということ
という2点の理由から守備的なシフトを敷き、自分達のスタイルを捨てたサッカーを選択した。しかし、結果は粘るも途中で集中力が完全に切れ1-5という大差で負けてしまった。今回のゲームは1部リーグであるが、すでに失うものはなく”今の自分達がどれだけ早稲田大学(日本トップレベル)を相手に戦えるか?”ということを確かめる為にも通常の戦術、いつものサッカーで打ち合うことを選択した。今のスフィーダは4ヶ月前と比較すれば格段に力を付けてきたことは日頃のトレーニングや試合からも分かっていた。だからこそ、全てをぶつけ、全てを出し切った中で何が出来るかが重要なことであった。それを確かめること、勇気を持って戦うことで潜在能力が引き出されることなどこの試合から得られるものは非常に多いと感じていた。
前半、普段通りに戦おうとするチームがあったが、やはり、相手との個々の差はあったのが事実。それもそのはずだが、選手達は勇気を持って勇敢に戦えていた。ゲームの主導権は相手にあり、相手の方がアクションを起こす回数が多かったし、シュート数(1対5)も多かった。しかし、シュート数からも分かるように、お互いにシュートまでいける回数が少ない。それはミドルゾーンでの攻防が多い割合を占めていたことの証明である。やりたいことが出来なかった前半ではあるが、相手にやらせない前半でもあった。選手達は相手に対する恐怖心こそあったと思うが、それを勇気で相殺し前半は相手に慣れる作業というイメージだった。
後半、相手にも慣れ徐々に自分達のサッカーを展開できるシーンが増えていた。しかし、開始直後に相手のセンターリングの上げ損ねが直接入ってしまうというアクシデントに見舞われ0-1となる。しかし、その直後に相手右サイドを崩し同点弾を叩き込み試合を振り出しに戻した。その後は比較的に相手が主導権を握っているものの、それでも完璧にやられているようなシーンは少なく、こちらが相手のゴールに迫る回数も増えてきた。ただ、何とか相手の攻撃を抑えようとしファールがかさみゴール付近でのFKやCKなどが多くなっていた。その中で1本だけ枠に飛んできた直接FKが入り1-2と勝ち越し点を奪われてしまった。GKの正面に飛んできたボールではあったが、雨で滑るボールをファンブルしてしまいミスから失点した。弾けば良いのに・・・と誰もが思ったようだが、私はむしろそこでキャッチしようとしたGKの判断を尊重したい。次から同じようなことを繰り返さなければ良いと考えし、技術的なミスなのか?判断のミスだったのか?それに気付ければそれで良い。こうした緊迫感のある中で攻防における貴重な経験として前向きに捉えていかなければいけない。何故なら、スフィーダは育成年代の組織であるからに他ならない。また、サッカーは1人で戦うものではない。それぞれの選手が瞬間的に判断し、協力し、全員の力が合わさって初めて大きな力を発揮する。その証拠にその直後、相手を完全に崩し同点弾を決めて見せた。全員の力が合わさったからこそ産まれた素晴らしいゴールだった。もっと言えばこの同点弾の起点はGKだった。1点目同様に素晴らしいゴールだったが、起点はGK、得点は途中出場の選手、ボールを運んだのはそれ以外の選手達・・・複数の選手達のイマジネーションが合わさり、そして、互いのミスや欠点を補いながらチームとして戦い続けたご褒美としての得点になった。同点弾を叩き込み2-2となったが、残り時間は5分間。その間、互いに勝ち越し点、逆転弾を狙うべく攻撃的に戦ったが、そのまま試合は終了し強豪早稲田大学と勝ち点1を分け合う結果となった。
スフィーダトップチーム再建から早くも8ヶ月間以上が経過したが、チーム、個人は日々成長し前進してきたことは事実である。後期に入ってからも1試合毎に自信を深め、成長できていた。その結果として、早稲田大学相手にこれだけの闘いを演じられたことに手応えを感じている。選手達も自分達に対する自信や確信を持てたことだろう。これまで急成長を遂げることが出来たことは言葉にするほど簡単なことではない。無論、私の経験上でも稀に見るような凄まじい成長だ。まずはそれを実現させてきた選手達に敬意を表すると共に、強化並びに育成という側面からも成功している部分が多いことが伺える。ただ、選手達が粘り、諦めず、戦い続けたからこその結果であり、運もあったかもしれない。サッカーは何が起こるか予測不可能な側面が多い競技が故に再戦した時に同じような結果となるかは分からない。それでも私達は更に厳しいトレーニングから今後も成長を続けて行くことだろう。
早稲田大学と引き分けられたこと(負けなかったこと)は悪い結果ではないかもしれない。それでもここで満足していれば次のステージには進めない。1つでも上のステージに、1人でも多くの選手を各種年代の日本代表選手に、という意識で活動を続けて行きたい。早稲田大学戦は重要な試合であったが、都リーグのたった1つの試合でしかない。満足してしまえば次のゲームで負けることになる。そうはならないように更なる強化&育成を高められる組織を目指し今後も環境整備に努め選手達の成長を考えて行きたいと思う。

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