4/23(日) 早稲田大学ア式蹴球部

reported by 川辺

東京都女子サッカー大会決勝戦は大学に本チャンピオンの早稲田大学。日本一になったのは昨年度のことであるが、主力選手は1名しか抜けておらず、昨年の戦力を維持している。そう考えただけでもこの決勝戦がどれだけ難しいものになるかは安易に想像できる。但し、早稲田大学はこの決勝戦まで上がってきた経過は思いのほか簡単なものではなかったようだ。その要因として考えられたことはいくつかある。まず、その1つに普段からトレーニングを積んでいるハイブリドターフの人工芝ではない土のグラウンドでの試合であったこと、2つ目にどこか余力を残し戦っていたことなどが挙げられる。まず、グラウンドについてであるが確かに普段から最高の人工芝でトレーニングしていれば、それが土に代わった時に大きな技術的な変化が生じるのは事実。技術に変化が生じることで多少のズレが連続し普段のサッカーが出来なくなるというのは間違いない。ただ、早稲田ほど技術の高いチームだけにそれを差し引いても勝ち上がることが出来ていたし、スコア的には1点差のギリギリのゲームが続いていたが、それはギリギリではなく余力を残した状態での1点差のように私には映っていた。そして、決勝戦はどうかというとここまで出場していなかった選手などが決勝戦で出場してきたこともあれば、大会側の配慮で決勝戦は人工芝のヴェルディGであった。更には不運なことに小雨がパラつきスリッピーな状態になってしまった。スリッピーな人工芝グラウンドでの試合というのは正直経験がものを言う。どういうサッカーが適切なのか?どういう技術が必要なのか?その全ては経験であると言って間違いない。しかし、この大会も含めて相手がどこであろうが負けるつもりはないし、決勝戦という選ばれたチームだけが上がれる特別な舞台を存分に楽しもうと思っていた。
このような状況の中、始まった決勝戦。開始直後に予想もしない形で失点を許してしまった。クロスの上げそこねではではあるが、アウトしたと判断したGKがそのボールを見過ごすとそれがそのままゴールイン。恐らく、クロスを上げた選手と線審、GKしかそのゴールに気付いていなかったのではないか。少なくとも私達のベンチからは何が起こったのかわかならかった。開始直後の失点であり出鼻を挫かれた感は否めないが、崩されて失った点ではないので選手達の闘争心に陰りはなかった。その後は最終ラインを高く保ち、速いチェックからボールを奪うことが出来、押されてはいるものの完璧にやられるというシーンもなく局面局面ではしっかりと戦うことが出来ていた。相手を恐れず最終ラインを上げ、コンパクトフィールドの中で激しく奪いに行く、、、決して引かず前から行こうという当初のプランは遂行されていたように思う。ラインを下げれば失点の可能性は減るが得点の可能性も減る、負けないサッカーをするのではなく勝てるサッカーをするのが今回のテーマだった。しかし、失点は次々とミスから奪われていった。ミスは誰でもすることであり、今の状態でそれをとがめるつもりもない。ただ、あまりにも不必要な失点が3点も続いたことは見過ごすわけにもいかない。相手のプレッシャーが速く、無意識のうちに相手を強く意識してしまった。もっと落ち着いていれさえすれば正しい判断が出来、全ての失点は簡単に防げていた。問題なのは仕方ないミスというよりは簡単な対応でミスを繰返してしまったということ。無言のプレッシャーを与えられるだけの強い相手であったのは間違いないが、それにしても相手を過大評価しすぎてしまい我をも見失う形になってしまったのは問題として捉えなければいけない。
ハーフタイムに入り話したこと、それは前半で起きた数々の判断ミスについて。まず、前半の3失点の内1つも崩されて失ったものはないということ。一概には言えないが、前半のミスが無ければ0-0だったかもしれない。それに内容的にも押されることが多い中で押し込める時間帯などもあり、戦い続けることは出来ていた。高い位置でボールを奪うからこそ効果的な攻撃が出来ていたのだが、スリッピーなピッチでボールコントロールに戸惑い落ち着いた判断が出来ていなかった。全てがずれてしまい自分達の攻撃の形を出せなかったのが問題だった。慌てふためき個人技頼みの攻撃になってしまうことや縦へばかり急ごうとする攻撃に横へのアクセントを付けられれば後半も戦えるはず。そう感じていた。
後半に入り序盤で初めて崩されて失点を喫した。最終的に後半も前半と同じスコアの失点を許すことになったが、それは前半から相手に激しくプレスをかけようと精力的に動き回っていたことで体力的に低下が見られた。全体の運動量が落ちチームとしてのプレッシャーのかけ方が後手後手となったことで相手主導のサッカーに陥ってしまったのだと考えられる。もっと最終ラインを高くキープしコンパクトフィールドを形成できていたのであれば戦況は変わっていたはず。相手の攻撃力を恐れてしまったことで最終ラインがズルズル下がる、それにより全体が間延びしプレッシャーが遅くなる、だから後手後手となる。もっと自分達から仕掛けられるような攻撃的な守備を実践したかった。しかし、そのような後手後手の走り回らなくてはならないサッカーの中で本当に動けなくなってしまったかというとそうではない。オフシーズンで培ったフィジカル面の向上は見て取ることが出来、運動量は落ちるものの走れなくなる選手は誰一人とていなかった。これは大きな前進だ。また、時折見せるカウンターアタックから可能性を感じさせるプレーをするものの相手を崩しきることは出来なかった。我々の奪った1点はフリーキックから奪ったもの。中には充分に渡り合える選手がいたので崩して得点を奪いたかった。
決勝戦は1-6という大敗で幕を閉じた。早稲田がこの大会の中で一番量産した試合がこの決勝戦だった・・・。決勝という舞台の中で勝利だけを目指し戦うことは出来ていたが、様々な面で早稲田との間に差があった。それは明らかな経験の差。グラウンド状態に適した戦い方、グラウンドへの慣れなどの差であったり、正しい選択を出来る判断力の差は特に感じた。もちろん正しい判断力を行動に移せるだけの技術力にも差はあった。この敗戦は悔しいことではあるが、この結果を受け止め、これから先の戦いに生かしていかなければいけない、絶対に無駄には出来ない戦いになったと思う。まだシーズンは始まったばかり、、、今シーズンは全ての公式戦で貪欲に勝利を目指していくことになるが、これからは結果を裏付けられるだけのチームの基盤固めに着手して行こうと思う。予定より若干早いが今からやらねば不必要な敗戦が増える・・・そう感じざるを得終えない決勝戦だった。

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